守り神との契約編〈1〉 メレメレ島~アーカラ島
■ introduction
マリエヌ達が『島巡り』を達成し、メランコリィ達ウルトラビーストとの戦いが終息して数ヶ月が経過した。
国際警察の支援により地方各地の復興が速やかに進められ、アローラ地方はかつての和やかな人々の営みを取り戻していた。
マリエヌ達島巡りメンバーはそれぞれの生活に戻りながらも、時折顔を合わせては依然として世界に迫る異常事態の謎を追い続けている。
そして、マリエヌの本来の目的である海外研修の授業が本格的に再開することとなる。それぞれの事情と夢のため、日々魔法の鍛錬に励む研修メンバー達。
一度は非常事態に巻き込まれながらも、アローラ地方の自然とポケモン達に適応することで乗り越えた彼らには、実は重大な役目が待っていた。
やがてアローラの神々に選ばれし子供達は、全ての宇宙を飲み込む世界の危機へと直面する――
■ メレメレ島 ハウオリシティ
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ハウオリシティはずれのスクールでは、本来の目的である海外研修の授業がようやく再開する。
授業の中でパッシィによりマリエヌ達研修メンバーに課せられたのは「アローラ地方の土地神である
『カプの守り神』と契約し、異文化のエネルギーの成り立ちを理解すること」だった。
初代アローラチャンピオンとなったことで一度メレメレ島の土地神・
ヘキリジスと戦って以降、その後も度々彼と手合わせをするようになっていたため今回の件を伝えようと戦の遺跡へ向かおうとしていたところ、偶然メレメレ島に訪れていた
ヘカティネアが遺跡に興味を示し研修メンバーと共について来ることになる。
遺跡で姿を現したヘキリジが事情を知ると彼は「お前の実力はすでに認めている。だが俺の力を使いこなせるかどうかは改めて確かめる必要がある」と告げ、試練として彼と一戦交えることになる。普段の手合わせよりもさらに激しい戦いを繰り広げた末にチャンピオンとしての実力を鈍らせることなく勝利を果たす。
ヘキリジスもそれを認めるのだが、すでにアポラティオと契約している自分がさらに彼と二重契約をすると相当の負荷がかかることになると警告し、「お前が二人分の力を受け止め切れるほどの強さを得るまで待つことにする」「魔力を繋ぐことはできなくてもお前が本気で呼びかけた時にはすぐに応じる。だが使い時を誤ってはいけない」と言うヘキリジスにより契約は“保留”という形になった。
ハウオリシティへと戻ろうと橋を渡る途中、ヘカティネアが何かの気配を感じ振り返ると、そこには遺跡に向かっていく人影――アポラティオの面影を感じるコスモッグの青年の幻影を目にする。
とっさに追いかけようと遺跡へ引き返そうとしたその時、数匹の野生のオニスズメがオニスズメが襲い掛かり、反撃しようとしたヘカティネアが凄まじい力を放ったことで橋が崩壊してしまう。
急いで彼女を連れ戻そうと追いかけたマリエヌまでも一緒に滝に落ちかけるが、またしても遺跡から駆け付けたヘキリジスによって二人して救出されるのだった。
■ メレメレ島 スクール校舎
パッシィの言ったアローラ地方での課題を行うための模擬テストを行うが、全てのテストを合計した結果アリアだけ実技の点数が足りなかった。
後日アリアには追試が行われることになるが、それに合格できなければいよいよ彼女だけを残して研修を再開することになってしまう。
全員で研修に臨むため、マリエヌ達はなんとかしてアリアが追試に受かるよう対策を考え始める。
日頃からアリアの魔法にはパワーが足りないことを分析していたクリュッグとロレーヌは、アリアの底力を上げるための体力作りが必要だと考える。そして体力と魔力の両方を鍛えるため、トレーニングと魔法の特訓を交互に行うことを提案した。
一番体力のあるアムザ指導のもと校庭のランニングや、それぞれの得意科目の教室での魔法のレクチャーなど、時間のある限り校舎中を駆け回りながら日々特訓を続けていく。
元々お淑やかだったアリアは体力勝負の特訓にてんてこ舞いだったが、一度も音を上げずに毎日懸命にメニューをこなしていた。そんな彼女の努力にマリエヌ達もひたすらにレクチャーの内容を考え付き合い続けていた。
追試当日、研修メンバー達のレクチャーとトレーニングによってアリアは威力の強い魔法を習得、さらに持久力も上がって多くの得点を獲得する。
そして後日告げられた結果は『合格』であった。これにより当初の予定通り、全員で海外研修の課題を再開することが叶ったのだった。
■ メレメレ島 リリィタウン~メレメレの花畑
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リリィタウンに来たマリエヌ達研修メンバーは、先日、戦の遺跡に訪れた際に壊してしまった橋を修理してくれているアンナと彼女の幼馴染の青年・
トワイと出会う。
トワイはエーテル財団に所属している財団員らしく、普段はワゴンでアローラ地方の各地を回っているのだが最近休暇を貰ったらしく故郷のリリィタウンに帰ってきたのだった。
研修メンバー達が海の向こうから海外研修のためにやってきたことをアンナに教えられ、目を輝かせて応援する気のいいトワイにマリエヌ達もすぐに打ち解けていく。
日が暮れてきた頃、メレメレ島に来ていたメルティオとアポラティオに「一緒にきていたはずのヘカティネアがどこかに行ってしまった」と聞かされ、メレメレ島での土地勘が強いトワイの協力を得ながら全員で彼女を捜索することになった。
辺りはすっかり夜になり、トワイがメレメレの花畑に洞窟の中に通り抜けられる穴があることを思い出す。マリエヌ達が花畑まで探しに来ると今正にヘカティネアが穴の中に潜り込んでいた。
ヘカティネアは戦の遺跡で見たコスモッグの青年の幻影を追って一人で海繋ぎの洞窟まで来ていた。しかし幻影はそのまま海面の向こうへ渡るように目の前で消えてしまう。直後、洞窟の中に入ってきたマリエヌ達にようやく保護された。
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一方、別の場所を探していたメルティオとアポラティオは、マリエヌ達からヘカティネアを発見した連絡を受けリリィタウンに戻ろうとする。
しかし突如何者かが襲い掛かり目の前に立ち塞がった。そこに現れたのはアローラ地方では見たことのない姿のルガルガンの男だった。
男はウルトラビーストのエネルギーを察知して攻撃を行うらしく、アポラティオからそのエネルギーを感じ取った男は戦闘を続ける。
2人で男を退けるものの、アローラから去ったはずのウルトラビーストを探す者の出現に、彼らは新たな脅威の訪れを予感するのだった。
■ 守り神との契約 1
■Round-1 クリュッグ VS プアレヒナ
マリエヌとヘキリジスとの契約が保留になったことにより、課題を実践するトップバッターにクリュッグが選ばれる。契約する相手となるのはアーカラ島の土地神カプ・テテフの
プアレヒナであった。
すでにアローラに現存している伝承や文献を調べ尽くしていたクリュッグは彼女の好きなものが「遊ぶこと」であることを知っており、"アローラ地方の子供達に人気の"あらゆる遊びをリサーチしたうえで命の遺跡に訪れ、試練に挑むことを告げてまずは「一緒に遊ぶこと」を切り出した。
それを聞いたプアレヒナも大喜びで快諾するものの、かなり長い時を生きている彼女にとってはそのほとんどが何度もやったことがある遊びだったためことごとく飽きてしまう。他の研修メンバーの力を借りながら手を変え品を変え次の遊びを提案するものの、ついには試練を行うこと自体に彼女のやる気が途切れてしまい……!?
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■Round-2 アムザ VS ウェウリコ
2番目に課題を行うのはアムザとなり、契約する相手となるのはウラウラ島の土地神カプ・ブルルの
ウェウリコであった。
ものぐさで自分から人前に顔を出したがらず、かつては森を伐採した身勝手な人間達に怒り狂い罰を与えたという言い伝えを聞き、アムザは気が重くなりながらも実りの遺跡へと訪れ、姿を現したウェウリコに試練を挑む。
最初こそ炎タイプの技で優勢になるものの、「彼を不快にさせない」という保守的な攻撃をしていることをウェウリコに気取られ、彼が地面から鈴のついた巨木を出現させると鈴の音によって己を回復させたのだった。
「お前が全力を出せば回復する余力も与えぬほど俺を完全に『倒せた』はずだが、こんな戦いでは試練なぞ話にならん。お前のそれは認められるための努力でも分かり合うための優しさでもない、嫌われないための自己保身だ」そう言って彼は裁定を下すこともなく姿を消してしまう……
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詳細1 /
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■Round-3 アリア VS イリュネイ
3番目に課題を実践するアリアが契約する相手となるのは、守り神の中では最後に対面することになる、ポニ島の土地神カプ・レヒレの
イリュネイであった。
彼岸の遺跡に訪れると、数か月前の『癒しの水』の件ですでに純粋な心を持っていることが認められていたためイリュネイはすぐに姿を現し、彼女に試練を挑む。
普段の物静かで無用な荒事は避ける印象とは一転し強力な一撃を次々に放つイリュネイに驚きながらも、高い耐久力を発揮しなら普段研修メンバー達から教えてもらっているアドバイスを駆使し、有効な戦法を見つけようと立ち回る。その意図に気付いたイリュネイが突如攻撃を止め、周囲一帯に数本の水柱と濃い霧を出現させると瞬く間に2人を覆い尽くしてしまった。
霧の中ではイリュネイの作り出した鏡面の反射によって彼女がどこにいるのかすら見えず、彼女の声だけが響く。「ここには助言をくれる者もお手本を見せてくれる者もいない。あなた自身が考えてあなた自身の中から正解を生み出すのよ」その言葉の数々にイリュネイは自分の全てをお見通しであることを知る――
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■Round-4 ロレーヌ VS セラヴィナ
最後にロレーヌの番が回ってきた頃にはマリエヌとの契約を保留しているヘキリジスを除き守り神全員がすでに他のメンバーと契約し終えており、自分が契約する相手がいない状況となっていた。
パッシィに言われてその後の他のメンバーの様子を観察していると、契約によって守り神の魔力を引き出すことができるようになったものの、力加減を制御できていなかったり一般人の前でも実体化しかけてしまうというハプニングの連続であった。
そしてパッシィから切り出された本題は「守り神の力をコントロールするために
『ある人物』と契約すること」だった。
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■Round-5 ヴィンリア VS オルドール
研修メンバー全員が契約を果たしたのを見届け、ヴィンリアは自身も共に勉強をしてきた成果を示すため純粋な魔導士としての試練に挑むべく、
オルドールとの正式な契約に踏み出す。
コアフォルム状態になっているオルドールの指示でエンドケイブまで連れて行くと、彼は完全体に姿を変える。
「平行世界が混ざる原因といずれは直接対峙するにあたり、パーフェクトフォルムになるため契約する必要がある。それは同時にお前の使命ももう後戻りはできなくなることを意味する」そう告げる彼の声はかつて自分の正体を明かした時と同じだった。
これまではカクタスに言われたことを言葉通りに理解していただけだった。だが『島巡り』を乗り越え、研修メンバー達の人生を知り、自分が守ろうとしている世界がどんな世界なのか、どんな景色なのか、どんな生活なのかを実感を持って知ることができた。だからここから先は自分自身の覚悟で進むのだとヴィンリアは答えるのだった――
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■ 守り神との契約 2
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今回は課外授業の一環として、アーカラ島のせせらぎの丘で
ラクネアによる講義を受けることになった研修メンバー。
仕事を終えて海辺でサーフィンをしていたトワイと会い、彼も加えてラクネアのもとへと向かう。
期待に胸を躍らせるクリュッグとアムザそしてトワイにロレーヌが呆れながらも、以前転移させられた際に匿ってもらった場所にある種の懐かしさを感じていた。湖に棲むヨワシ達も顔見知りのロレーヌに反応を見せるが、次々に別の池へと泳いでいってしまう。その姿を見たマリエヌとヴィンリアはかつての『島巡り』の試練と同じであることに気づき、一行はヨワシ達の後を追っていく。
次第に空は曇り出し大雨の嵐に見舞われる。ついに湖の奥へと辿り着くとそれまでに目にしたヨワシ達は水の中で一斉に群れを成し、巨大な影から現れたのは――研修メンバーを待ち構えていたラクネアだった。
嵐を背に上機嫌で立ちはだかるラクネアは容赦なく攻撃を仕掛ける。大雨の天候によってその威力は普段よりも増し、さらにヨワシ達がラクネアにとって最適な水質の池へと誘導したことで立ち回りまでも優位を取る。これこそがこの課外授業で教えようとしている水質を利用したバトルの実態だった。
マリエヌやヴィンリアでさえも圧倒されるラクネアの攻勢にクリュッグ達の期待は儚く砕け散りながらも、全員の魔法を駆使して攻略法を探ろうと試みる。そしてトワイが電撃を当てたことで突破口を見つけ、全員の連携で雨の影響とアクネアの技をカバーした後クリュッグの『マジカルリーフ』を命中させラクネアを倒すことに成功した。
これにより今回の課外授業に合格したことをラクネアに認められるのだった。
翌日一行がオハナタウンに訪れると、トワイはスカル団にいじめられているロコンをを発見し咄嗟に助けに入るが、複数人を一度に相手にしたことで返り討ちにされてしまう。
だがそれを目撃した研修メンバーと守り神達がスカル団の悪行に業を煮やし、徹底的に懲らしめるべく守り神本人達の力を放ってスカル団を撃退した。
傷ついたロコンを治療するためにワゴンカーに保護した際に初めて自分の前で実体化した守り神達を目にし、非常に驚きながらもマリエヌ達に自分達が行っている研修の全容を説明されることとなった。
後に彼らの教師であるパッシィにもそのことが伝わり、それまで研修メンバーと良好な付き合いをしていることを踏まえ「便宜上の現場での保護者」という形で研修に全面的に関わることを了承されたのだった。
そして、保護していたロコンの傷が回復しトワイは野生へ帰すべきか考えるものの、スカル団に手酷く攻撃されたロコンは人間不信になってしまっていた。それでも付きっきりで看病をしていたトワイには懐いている様子を見せ、彼の傍にくっついている。
そんなロコンの姿にトワイは再び怯えずに過ごせるようになるまで自分が面倒を見ることを決心し、ロコンに『ケオケオ』という名前とハイビスカスの花飾りを与えた。
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その日の夜、パッシィに課外授業の報告を終え空間研究所に戻ろうとするラクネアは仕事でアーカラ島に来ていたアンナと出会う。
一緒にカンタイシティまで送り届けようとするが、突如2人にあのルガルガンの男が襲い掛かる。
男は彼女達からウルトラビーストと接触したとおもしきエネルギーを感知し、それを見たアンナは先日メルティオ達がメレメレ島で同じように襲われたという話を思い出した。
ラクネアと協力して戦い男は撤退したが、自分達がウルトラビーストと戦ったことを知っている者が現れ、不安に影を落とすのだった。
■ 守り神との契約 3
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次にパッシィの依頼で課外授業を行うのはヴェラ火山公園で待つオニキスだった。
特殊魔導の素質を持ち“黒魔術”という特殊な部類の魔法を使う彼から、その実態を教わることとなる。
基本的に教本や文献、先達の理論をなぞる形で魔法を使っている研修メンバーに対し、オニキスは「自分にとって使いたい力がどんなものなのか、そのために必要なものは何なのか、自分の中でイメージをはっきりさせることが恐らく重要」と説明する。
その実践として告げられたのは、火山に感謝を捧げる踊りを行うことだった。「感謝がはっきりと伝わらないと火山は応えてくれないからな」と何故か上機嫌に話すオニキスに、マリエヌとヴィンリアはかつての『島巡り』の時の意趣返しかと考えるものの、仕方なく全員でダンスの練習を始める。
そんな中、ルガルガンの男がオニキスを狙ってついに白昼堂々と姿を現す。
咄嗟に応戦したオニキスはメルティオとアポラティオ、そしてアンナとラクネアから男のことを聞いており、ウルトラビーストに強い敵意を示し関わった者にまで襲い掛かるその行動から『ビーストハンター』と呼ぶ。そしてまだ襲われていないオニキス達の前にもいずれ姿を現すだろうと警戒していた。
しかし男の様子はそれまで島巡りメンバーと対峙した時とは異なり、オニキスから検出されたウルトラビーストの反応ではなく、オニキス自身に強い執着を見せ始める。マリエヌ達も加勢して攻防の応酬を続けるも一向に食い下がろうとしない男に、オニキスは研修メンバーを退避させ黒魔術を解放する。
噴き上がる黒い炎から、研修メンバー達は彼の「必ず仕留める」という殺意とも言える強い意志を肌で感じ、オニキスが全力で放った『無限闇夜への誘い』を受け男は辛くも撤退した。
その場しのぎでビーストハンターの男を追い払うことはできても、正体も目的も一切不明な彼を野放しにすることに危機感を覚えるオニキス。
何よりも男が装着しているデバイスがウルトラビーストの気配に反応することで動くように見えていたのが、自分と戦った瞬間に明らかな自我を見せたことに得体の知れない気味の悪さを感じていた。
そして彼はどこから現れどこへ去って行くのか、今は誰にもわからないままだった。